はじめに
一部の本屋さんで先行販売が始まった技術評論社さんの「Azure OpenAI ServiceではじめるChatGPT/LLMシステム構築入門」、私も一足早く入手できたので読んでみた感想をまとめます。
発売前からすでに人気で「AOAIドーナツ本」と呼ばれているみたいです。ChatGPTのアイコンからフレンチクルーラー想像しちゃうのは私だけではなかった😄
感想
タイトルに「入門」とありますが、よくある初学者向けの広く浅くの本ではありません。LLMを実際に社内で業務活用しようとされている方や、LLMを使ったCopilotのアプリを作ろうとされている方、社内の複数のアプリを管理していく方までターゲットになっている広く深くな本です。これからLLMの勉強を始める方はもちろんのこと、すでに一通り触って理解は済んでいて、これから実用化していこう、本番運用していこうと思われている方にも非常に役立つ本だと思います。
私は、2023年4月にAzure OpenAI ServiceのChatGPTとIBM Watson Discoveryを組み合わせた自社サービスの企画・開発・リリースを担当したのですが、その頃はAzure OpenAIを体系的に学べるようなものはなく、ネットでの情報探しと試行錯誤の連続で大変苦労しました。でも、この本があればAzure OpenAIが体系的に学べるのでそのような苦労は不要になってしまいます。なんか、ちょっと複雑な気持ちです。
本の概要
概要をご紹介しようかと思いましたが、著者のお一人でこの本の全体統括を担当された日本マイクロソフト永田さんの以下の記事をご覧いただくのがよいでしょう。なんと2020年に新卒入社されたばかりなのに、著名な方々ばかりの執筆陣6名を束ねたとんでもない方です。永田さんの記事では、本の概要紹介だけでなく執筆時の苦労話まで出てきます。
初稿が書き終わった段階で有識者の皆様にフィードバックをお願いしたのですが、そこで手厳しいもの含めさまざまなフィードバックを頂き、本書全体の構成を練り直すことになりました。
うぅ、もうこの1文だけで胃がキリキリしてきますね。ぜひ、こちらを。
この本のオススメのポイント
1. 豪華な執筆陣による高い信頼性とわかりやすさ
ChatGPTやLLMを使った開発をされている方は、以下のようなコンテンツで勉強されてきたのではないかと思います。そのコンテンツを作成されている方々が執筆陣に名を連ねているのがオススメのポイントです。
- 「ChatGPT/LangChainによるチャットシステム構築[実践]入門」の著者のお一人で「ChatGPT Community(JP)」主催者のセクションナインの吉田さん
他にも、日本マイクロソフトの伊藤さん、宮田さん、立脇さんが執筆されています。
Azure OpenAI Serviceを使用してChatGPT/LLMを組み込んだシステムを作る技術書をChatGPT/LLMとゴリゴリ向き合ってるメンツで書きました、よろしくお願いしますm(__)mhttps://t.co/mhtVlCGt5m#AOAIドーナツ本
— イトー (@ep_ito) 2023年12月22日
来年1月にAzureOpenAIの本を出版します!RAGの章を担当させていただきました!予約開始していますので、是非よろしくお願いします😀#AOAIドーナツ本 #ChatGPThttps://t.co/HFt1h0EZZ4
— Taishi Miyata (@tmiyata25) 2023年12月22日
2. 充実しているコラムと付録
途中に入っている短いコラムや末尾の付録も非常に有用です。たとえば「RAGの回答精度を向上させるには?」では、自社でRAGなサービスを展開している私はうなずきすぎて首がもげそうでした。また、「OSSライセンスと機械学習モデル」はコラム扱いなのか不思議なくらいの充実した内容です。付録Bの「ChatGPTの仕組み(詳細編)」も、「ゼロから作るDeep Learning ❷ ―自然言語処理編」の続きが読みたかった私にはちょうど良い内容でした。
この本で注意すべきポイント
タイトルに「入門」とありますが、前述のように幅広い読者を想定した広く深くの本です。初学者が1冊終わりまで読み切って中級者を目指そう!みたいな入門書ではありませんのでご注意ください。ご自分に必要な箇所を必要になった時に読むのがいいでしょう。ただ、将来必要になる頃には内容が古くなってしまうかも…… まずは目次を眺めていただいて、興味のある章がどれくらいあるのかでご判断いただくのが良いかも知れませんね。
買うかどうかお悩みの方は、2024年1月22日夜にオンラインで出版記念イベントが開催されます。執筆者の方々のお話しが聞けるので、まずはこちらへ参加してみましょう!
おわりに
執筆者のみなさま、おかげさまでAzure OpenAI Serviceを体系的に学ぶことができ、私は特に非機能要件の部分などが勉強になりました。ありがとうございました!